古代ギリシャのトロイ戦争における愛憎のドラマを描いた歴史スペクタクル!
トロイ史劇に偏愛があることと原作の『イリアス』が大好きだということで、珍しく映画館に足を運んで見た映画です。
『イリアス』のアキレスは世界文学史上最高のキャラと言われています。後世あれを超える文学キャラは登場しなかったと。アレクサンダー大王が模範と仰いだ偶像でもある(どこらへんが模範なのかは謎だが)。近現代の作家には作れないキャラです。近現代の戦記物ならば、ヒーローは「完璧な男・ヘクトール」の方なんですね。で、本編のアキレスですが、ブラピは良い俳優だし立ち姿やら大変に美しいけれど、なんだかフッツーの男のアキレスになっている(しくしく)。「人間アキレスを描いた」っても、ヤツは厳密には人間じゃないからこそ、人間レベルの理非の通じない、史上最高のエゴイストなんざます。アキレスには神の持つ酷薄と気紛れがあるんです。だから味方の軍がどんなに追い詰められても平気で、パトロクロスという己の分身が殺されてやっと動く。しかしパトロクロス戦死の報を受けてのアキレス大狂乱、文学史上に燦然と輝く名場面なのに、なんとインパクトの弱い…とゆーか、パトロクロス、この映画じゃ存在感が…何故か「少年」って設定されているし。あうあう。
映画館で真面目に見てしまった時はかように歯軋りの連続だったのですが、しかし後日DVDで見直した折りには結構楽しかったでございます。いかにもアナボリックステロイドを皮下注射してプロテインをぐびぐびしながらベンチプレスに励んだぜ的な男優の肢体がこれでもかこれでもかと登場するので、男性肉体美でもってオンナ客かモーホー客を喜ばせようというハリウッドの直球の努力に頭が下がる思いがしたというか。ヘクトール役の俳優さんは一番美味しい役に恥じない素敵さですし、史劇となると男優さんたちが楽しそう。勧善懲悪からはほど遠い、「カッコいい男は皆戦死しました」(←開高健の言葉だ)って悲痛の極みの古代戦記物がハリウッド娯楽大作になっているというだけで結構満足感がありました。
星三つなのは、ハリウッド仕様のロマンス部分がさすがに鬱陶しいということと(パリスはともかくアキレスには要らん)、「原作ファンとはウザイ存在である」というだけでございます。